編集者:ケトン体ラボ編集部
公開日:2026.08.17
ケトン体で運動パフォーマンスが変わる?体脂肪をエネルギーとして利用されるメカニズムをご紹介
昨今、アスリートやトレーニーの間で「ケトン体」が注目を集めています。
その理由は、ケトン体は体脂肪からつくられるため、糖質よりもエネルギーの供給が安定しているといわれているからです。この特徴により、持久力やスタミナなど、運動パフォーマンスの維持を期待できることから、糖質制限やファットアダプト(脂質、タンパク質の積極的な摂取)などでケトン体を積極的に体内で生成し、運動時のエネルギーとして利用する人が増えています。
そこで本記事では、ケトン体と運動にまつわるメカニズムについて解説します。ケトン体を運動に取り入れる具体的なメリットや実践ポイントも紹介しますので、ぜひご自身のトレーニングにご活用ください。
この記事の監修者
- 後平 泰信さん
- 医療法人徳洲会札幌もいわ徳洲会病院 病院長 / 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
札幌東徳洲会病院で初期研修医として勤務後、札幌徳洲会病院循環器内科に入職。その後、同病院の循環器内科医長、循環器内科部長、睡眠・無呼吸・遠隔医療センター長を歴任する。2024年4月に医療法人徳洲会札幌外科記念病院の病院長に就任。2025年10月に医療法人徳洲会札幌もいわ徳洲会病院に名称変更した後も病院長を務める。日本睡眠学会遠隔医療委員、日本遠隔医療学会睡眠遠隔医療分科会メンバー、Sleep Research Next Generation研究会世話人、北海道睡眠研究会世話人としても活動。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
この記事の目次
運動パフォーマンスをサポートする「ケトン体」とは?
私たちの体は、「2つのエネルギー」によって活動しています。1つは糖質からつくられる「ブドウ糖」、そしてもう1つは体脂肪からつくられる特別な物質「ケトン体」です。ここでは、ケトン体がどのようなメカニズムで運動パフォーマンスを継続させるのか、その秘密を紐解いていきましょう。
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ケトン体はブドウ糖に代わる「第2のエネルギー」

通常、私たちが運動するときにエネルギーとして使われているのは、炭水化物からつくられる「ブドウ糖(糖質)」です。しかし、体内に蓄えられる糖質の量には限界があります。
そこで活躍するのが「ケトン体」です。
ケトン体とは、体内の糖質が不足した際、代わりに体脂肪を分解して体内でつくられる「第2のエネルギー」です。脳や筋肉のエネルギーとして利用されます。
なぜケトン体が運動効率をサポートする成分として注目されるのか?
前述したとおり、糖質は体内に蓄えられる量に限界があり、一般的に約1,500~2,000kcal分です。しかし、体脂肪を分解して体内でつくられたケトン体を利用できる体になると、糖質をはるかに超える膨大なエネルギーを体内でつくり出せるようになります。
たとえば、「体重55kg・BMI22の成人女性」の場合、ケトン体の原料となる体脂肪の量は約14kgです。これは約10万kcalに相当します。つまり、体重55kgの成人女性がフルマラソンを走ると消費カロリーは約2,300kcalなので、単純計算で40回以上ものフルマラソンを完走できるエネルギーを体内に保持しているということです。
これこそが「ケトン体は運動時の力強い味方」といわれる理由です。
「ケトン体を外から摂取」が注目される理由
ここまで読んで「今すぐケトン体をエネルギーにしたい」と思ったことでしょう。しかし、ケトン体をエネルギーにするには大きなハードルがあります。
これまでの糖質をメインエネルギーにしていた代謝から、ケトン体をメインエネルギーとする代謝に切り替えるには、通常、約1週間にわたる厳格な糖質制限が必要です。これは心身ともに負担が大きく、一時的に眠気やだるさといった風邪に似た体調変化(ケトフルー)を感じることもあります。
そこで現在、トレンドとなっているのが「ケトン体を外から摂取する方法」です。
サプリメントやドリンクとしてケトン体を直接体内に取り込むことで、糖質制限をすることなく、血液中のケトン体濃度を高められ、エネルギーとして利用できるようになります。
加えて、体内に糖質とケトン体のダブルエネルギーを同時に存在させることができます。これにより、糖質による短距離のダッシュ力と、ケトン体による長距離のスタミナを合わせ持つことが可能になるといわれています。
運動時のケトン体利用と脂肪代謝のメカニズム

私たちが運動をしている最中、体の中ではどのようにして体脂肪からケトン体がつくられ、使われているのでしょうか。ここでは、体がメインエネルギーを「糖質」から「ケトン体」へ切り替えるメカニズムについて解説します。
糖質の枯渇で「ケトン体回路」が活性化
長距離ランニングや大きな負荷をかけるトレーニングなどにより体内の糖質が枯渇すると、体は「このままではエネルギー切れになる」と判断します。
すると、蓄えられている体脂肪を分解して体内でつくり出したケトン体をメインエネルギーとして利用する回路「ケトン体回路」が活性化します。
つまり、体内の糖質量を極限まで減らすことが、ケトン体を生み出す最初のトリガーとなります。
有酸素運動により脂肪消費の効率アップ
ケトン体回路に切り替わった後、「有酸素運動」をおこなうと、体脂肪の消費効率がさらにアップします。
有酸素運動とは、呼吸で酸素を取り込みながら軽~中程度の負荷を継続して体にかけておこなう運動のことです。ウォーキングやジョギング、サイクリングなどが代表的です。
体脂肪を消費するには酸素が不可欠であるため、有酸素運動をおこなって全身に酸素を運ぶことが脂肪消費の効率アップにつながります。
また、普段から糖質制限などによりケトン体をメインエネルギーとして利用している体であれば、有酸素運動を開始してから体脂肪が消費され始めるまでの時間が短くなります。そのため、運動中のエネルギーを自らの体脂肪でカバーしやすくもなります。
ミトコンドリアでのエネルギー産生と酸素の役割
ケトン体や糖質を長時間にわたってエネルギーとして利用するには、「ミトコンドリア」の働きが欠かせません。これらは血液に乗ってミトコンドリアに運ばれ、そこで酸素を使って「ATP(アデノシン三リン酸)」という物質に変換されることで、私たちの体はスタミナを維持できます。
ミトコンドリアとは、私たちの体にあるほぼすべての細胞内に存在する細胞小器官で、ATPをつくり出す「細胞のエネルギー工場」と呼ばれています。私たちの体に必要なエネルギーの約90%以上が、ミトコンドリアでつくられたATPによってまかなわれています。
ミトコンドリアでATPをつくる際、原料が糖質の場合、多くの酸素を必要とします。一方、ケトン体は糖質よりも少ない酸素で多くのATPをつくり出せます。
このことは「活性酸素」の発生量に影響します。
活性酸素は、適度な量であれば体内に侵入したウイルスや細菌を除去する防衛システムとして働きます。しかし、過剰に増えると細胞や血管を傷つけ、体の酸化を引き起こし、疲労などの原因となります。
つまりケトン体は、少ない酸素で多くのATPとなり、また疲労の原因となる活性酸素の発生が少ないということです。
「ケトン体 × 運動」の具体的なメリット

ここまでケトン体がエネルギーとして利用されるメカニズムと特徴について説明してきました。では、体内で生成したケトン体を運動時のエネルギーとして利用できるようになると、パフォーマンスにはどのような変化があらわれるのでしょうか。ここでは、アスリートやトレーニーが注目する理由である、4つの具体的なメリットについて解説します。
体脂肪をエネルギー源として活用
最大のメリットは、体脂肪がエネルギーとして利用されやすい点です。
糖質は、ATPに変換するまでのプロセスが体脂肪よりも短く、素早くエネルギーとして利用できます。この特徴により、体は糖質をメインエネルギーとして優先的に選択するため、体内に糖質が残っていると、運動をしてもなかなか体脂肪を消費するスイッチが入りません。
しかし、日ごろから糖質制限をするなど、体内の糖質が枯渇しやすい状態にしておくと、体は運動時に体脂肪を積極的に分解し、体内でつくり出したケトン体をエネルギーとして使い始めます。結果として、体脂肪の減少=体重減少を期待できます。
持久力の維持を支えるエネルギー供給
長距離マラソンや長時間トレーニングをおこなっている最中、急に体が重くなり動けなくなった経験はありませんか?これは「ハンガーノック」といい、激しい運動によって体内の糖質が欠乏し、極度の低血糖状態に陥ることで起こる現象です。
体内で生成したケトン体をエネルギーとして使うようになると、ハンガーノックの予防に役立つと考えられています。なぜなら、糖質が尽きる前に体脂肪を分解して体内でつくったケトン体をメインエネルギーとして使い始め、糖質の消費節約を期待できるからです。しかも、標準体重の人でも体脂肪には約8万~10万kcalもの膨大なエネルギーが眠っています。
つまり、ケトン体により長時間の運動でもスタミナを持続でき、レース終盤のここぞというときに温存していた糖質を使ってスパートをかけることが期待できます。
脳のエネルギーとなり、集中した状態をサポート
長時間の運動で体内の糖質量が極度に減ると、低下するのは持久力だけではありません。脳も疲労し、パフォーマンスを大きく低下させます。
脳のエネルギーは基本的に糖質のみといわれていますが、これは大きな間違いです。実はケトン体も脳のエネルギーとして利用することができます。
過度な運動により脳に過剰な負担がかかると脳が疲労します。これを「中枢性疲労」といいます。中枢性疲労が起こると、筋肉はまだ動く状態であっても、脳から筋肉への指令が弱まるため、パフォーマンスが十分に発揮できなくなります。
しかし、体内で生成されたケトン体が脳に供給されていれば、糖質が枯渇しても脳はエネルギー不足になりづらく、運動や試合中において集中した状態をサポートしてくれます。
筋肉の維持をサポート
ハードなトレーニングをおこなう人にとって、最も避けたいのが「筋肉の分解(カタボリック)」です。
限界を超えた運動や長時間の有酸素運動によって体内の糖質が不足すると、自身の筋肉(タンパク質)を分解してアミノ酸に変え、それをエネルギーとして使おうとします。せっかく鍛えた筋肉が、運動によって減ってしまうのです。
しかし、血液中に体内でつくったケトン体があると、体はエネルギー利用が可能な状態と認識し、筋タンパク質の分解を抑える方向に働くと考えられています。つまりケトン体は、「大切な筋肉を守る」作用も期待できるということです。
- 後平 泰信さん
- 医師
減量期や長時間のトレーニングにおいて、トレーニーが最も恐れるのが「筋肉の分解(カタボリック)」です。体がエネルギー不足を検知すると、せっかく鍛えた筋肉を削ってアミノ酸に変え、エネルギーの代替えにしてしまいます。ケトン体を血中に満たしておくことは、体に「エネルギーは十分にあるから筋肉を壊さなくていいよ」と伝えるサインになるため、筋肉量を維持したままボディメイクを目指したい方に最適です。
効率よくケトン体を利用するための実践ポイント

体内でつくったケトン体が運動時のエネルギーとして利用されるメリットを理解したところで、次はいよいよ実践編です。ここでは、ケトン体を運動パフォーマンスの継続に直結させるための具体的な方法について解説します。
体脂肪がエネルギーとして利用されやすい運動強度と時間帯
体脂肪をエネルギー源として活用し、体内で生成されたケトン体をエネルギーとして利用するには、運動の強度と、運動をおこなう時間帯が鍵となります。
体脂肪の消費効率が上がるのは、呼吸によってしっかりと体内に酸素を取り込める「軽~中程度の有酸素運動」です。目安としては「息は弾むが、人と会話はできる程度」を意識しましょう。軽いジョギングや早歩きのウォーキングなどが最適です。
また、有酸素運動をおこなう時間帯も重要です。体内の糖質量が最も少なくなっている、朝起きた直後・朝食前の有酸素運動がおすすめです。体は素早く体脂肪を消費し、体内でケトン体を生成し、それをエネルギーにするモードに切り替わります。
朝の運動が難しい場合は、先にスクワットなどの筋トレをおこなって体内の糖質を消費してから、有酸素運動に移行するのもいいでしょう。
ケトン体スコアを把握する「測定」の重要性
もう1つ欠かせないのが、自分の体内のケトン体濃度を測定することです。
体脂肪を分解し、体内でつくったケトン体をエネルギーとして使い始めると、「甘酸っぱい独特の口臭」「尿のにおいが強くなる」「異常な喉の渇きと頻尿」「一時的な眠気やだるさ」といった初期現象があらわれます。
しかし、これらの現象は「体の不調」や「水分不足」である場合があります。
体内の状態を正しく把握し、ケトン体の恩恵を受けるためにも、専用の検査キットを使って測定しましょう。主な測定方法には以下の2つがあります。
| 尿検査 (ケトン体試験紙) | 試験紙に尿をかけて色の変化でケトン体濃度を調べる。ただし、体がケトン体に適応すると、体内でつくられたケトン体は無駄なくエネルギーとして使われるようになるため、尿にケトン体が混ざりにくくなる。使用の際は初期がおすすめ。 |
| 呼気検査 (ケトンブレスチェッカー) | 息を吹きかけてケトン体の濃度をはかる。一度測定器を購入すれば、繰り返し測定できるため、最もコスパが高い。飲食や歯磨き後は正確な結果が出にくいため注意が必要。 |
ケトン体を「外から摂取」という新しい選択肢
サプリメントなどでケトン体を外から摂取する方法は、体脂肪を消費する「ケトン体回路」が動き出し、糖質とケトン体のダブルエネルギーを期待できる、新しいアプローチです。しかも、ケトン体を摂取するタイミングによってそれぞれ異なる恩恵も受けられます。
たとえば、運動の30~60分前に摂取することで、運動開始時からケトン体と糖質のダブルエネルギーを稼働させ、高いパフォーマンスを見込めます。また、マラソンなど長時間の競技中に補給すればスタミナをサポートし、ハードなトレーニング後にとることで体のアフターケアをサポートします。
まさに、スポーツをする人々の力強い味方といえます。
まとめ
ケトン体は、私たちの体に蓄えられた体脂肪を分解してつくられる、糖質に次ぐ「第2のエネルギー」です。
糖質は、体内に約1,500~2,000kcal程度しか蓄えられません。しかし、ケトン体の原料となる体脂肪は、標準体重の人であっても約8万~10万kcalという膨大なエネルギーを秘めています。このエネルギー量こそが、ケトン体が運動時における「力強い味方」と呼ばれる最大の理由です。
さらに、体内で生成したケトン体をエネルギーとして回せるようになると、「体重」「疲労」「集中」「筋肉」のサポートも期待できます。
まさにケトン体は、アスリートや、ボディメイクをおこないたいトレーニーにとって、これ以上ない心強いサポーターです。
体脂肪をエネルギーとして利用する「ケトン体回路」は、誰もが体に備えている機能です。ぜひ今日からケトン体を意識した食生活や運動習慣をスタートして、ご自身の中に眠るパワフルなエネルギーを目覚めさせましょう。
体内の糖質量を減らす「糖質制限」や「ケトジェニック」をおこなう際は、ご自身の体調をよく観察し、必要に応じて医師や管理栄養士などの専門家に相談しながら進めることをおすすめします。
よくあるご質問
- 後平 泰信さん
- 医師
ケトン体は、糖質(グリコーゲン)が不足した際に利用される代替エネルギー源です。運動中、特に長時間の活動では体内の糖質貯蔵量が減少するため、脂肪やケトン体の利用割合が高まります。そのためケトン体は、持続的なエネルギー供給を支えるエネルギー基質の一つと考えられています。
- 後平 泰信さん
- 医師
主な理由として、持久力サポート、エネルギー供給の多様化、長時間競技での利用可能性などが挙げられます。マラソンや自転車競技、サッカーなどで関心が高まっています。
- 後平 泰信さん
- 医師
ケトン体は持久系スポーツにおいてエネルギー源の一つとなります。
ただし、競技レベルや運動強度、栄養状態によって結果は異なり、全ての競技で同じ効果が得られるわけではありません。
- 後平 泰信さん
- 医師
運動前に摂取することで、血中ケトン体濃度の上昇を目的とする場合があります。
特に持久系競技では、エネルギー戦略の一環として活用されるケースがあります。
この記事の監修者
- 後平 泰信さん
- 医療法人徳洲会札幌もいわ徳洲会病院 病院長 / 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
札幌東徳洲会病院で初期研修医として勤務後、札幌徳洲会病院循環器内科に入職。その後、同病院の循環器内科医長、循環器内科部長、睡眠・無呼吸・遠隔医療センター長を歴任する。2024年4月に医療法人徳洲会札幌外科記念病院の病院長に就任。2025年10月に医療法人徳洲会札幌もいわ徳洲会病院に名称変更した後も病院長を務める。日本睡眠学会遠隔医療委員、日本遠隔医療学会睡眠遠隔医療分科会メンバー、Sleep Research Next Generation研究会世話人、北海道睡眠研究会世話人としても活動。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。
この記事の編集者
ケトン体ラボ編集部
ケトン体の研究をしている大阪ガスが、ケトン体の基礎知識から関連分野まで、皆さまの健康的な生活を支える信頼性の高い情報をわかりやすくお届けします。
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日常生活レベルであれば、ブドウ糖(糖質)だけでもエネルギーは足ります。しかし、エネルギー消費量の多いアスリートの場合は、常にエネルギーの「枯渇」との戦いです。ケトン体という第2のエネルギーを使える状態(ケト適応)にしておくことは、車でいう「ハイブリッドエンジン」を搭載するようなもの。メイン燃料が切れても失速しないタフな体づくりの基盤となります。