編集者:ケトン体ラボ編集部
公開日:2026.09.16
尿ケトン体陽性(プラス+)は異常?判断基準とダイエット中なら正常な理由
健康診断で「尿ケトン体陽性(プラス+)」という結果を初めて目にすると、「体が危険な状態になっているのでは?」と不安を感じる方が少なくありません。
しかし、尿からケトン体が検出されたからといって、必ずしも危険であるとは限りません。むしろ、糖尿病などの持病がなく健康体でダイエットをおこなっている方にとっては、体脂肪が消費されているうれしいサインです。
そこで本記事では、「尿ケトン体陽性」という結果が出る体のメカニズムについて解説します。ご自宅で尿内のケトン体濃度を調べる方法なども紹介しますので、ケトン体が気になるときにぜひご参考ください。
この記事の監修者
- 五藤 良将さん
- 医療法人社団五良会 理事長 / 竹内内科小児科医院 院長
防衛医科大学校卒業。大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院などで自衛隊医官として勤務。その後、津田沼中央総合病院などを経て現職。中性脂肪や生活習慣病に関する研究・発信を行っている。
この記事の目次
尿ケトン体陽性(プラス+)は大丈夫?「心配ないケース」と「危険なケース」

尿検査で「尿ケトン体陽性」という結果が出ても、必要以上に不安を感じる必要はありません。
実は、私たちの体がエネルギーをつくり出すときの「正常な働き」として、尿ケトン体が陽性になるケースが多いのです。
ここでは、心配のいらないケースと、医療機関を受診する必要がある危険なケースの違いについて解説します。
空腹・ダイエット・運動による陽性は正常
前日の夕食から何も食べていないなど長時間の空腹や、糖質制限などのダイエット中、または激しい運動をした後などは、尿ケトン体が陽性になりやすいタイミングです。
これは正常な生理現象であり、基本的には心配いらないことが多いです。理由については次章で詳しく解説します。
合わせて読みたい!
ケトジェニックダイエットとは?やり方と注意点・糖質制限との違いを解説
つわりや発熱・脱水による一時的な陽性の場合もある
一時的な体の変化や体調不良により尿ケトン体が陽性になる場合があります。
その代表的なケースが、妊娠中です。
胎児の成長には膨大なエネルギーが必要です。そのため、母体が摂取した糖質は優先的に胎児へと送られ、結果、母体は糖質が枯渇しやすい状態になります。
加えて、つわりによる食欲不振で、食事から得られるはずの糖質量も減ります。これらにより速いスピードで体脂肪が分解され、尿ケトン体が陽性となります。
ほかにも、感染症による発熱で尿ケトン体が陽性になることもあります。
体内にウイルスや細菌が侵入すると、免疫細胞を活性化させるために体は体温を上昇=発熱させます。一般的に、体温が1℃上がるごとに基礎代謝は約10~13%増加するといわれています。つまり、免疫システムをフル稼働させ、ウイルスや細菌と闘うためには、ばくだいなエネルギーが必要になるということです。
さらに、感染時は胃腸の働きが落ち、食欲が低下します。食事からの糖質供給量が減ることで、体は体脂肪を分解して代替エネルギーをつくり出す代謝へとシフトしやすくなるため、尿ケトン体が陽性となります。
また、下痢や嘔吐、発汗などで脱水症状となったときも、尿が凝縮されケトン体の濃度が相対的に高くなることもあります。
以上のような場合、「医師から特に指摘されない」「吐き気などの症状がない」のであれば、通常、過度な心配は不要です。症状が落ち着き、水分と糖質をしっかり補給できるようになれば、自然と尿ケトン体は陰性に戻ります。
合わせて読みたい!
ケトアシドーシスとは?症状・原因・糖尿病性との違いをわかりやすく解説
尿検査でケトン体が陽性(プラス+)になる原因とは?
尿検査でケトン体が陽性になる最も一般的な原因として考えられるのは、「体内の糖質不足」です。糖質が不足すると、体はエネルギー源を糖質から脂肪へ切り替えるため、ケトン体がつくり出されます。なぜそのような現象が起こるのか、そのメカニズムを解説します。
ケトン体陽性は脂肪燃焼のサイン

通常、私たちの体は食事からとった糖質を主なエネルギー源とします。しかし、体内の糖質が不足すると、体はエネルギー切れを防ぐため、蓄積されている体脂肪を分解して代わりのエネルギーをつくり出そうとします。
この体脂肪が分解されて体内で生成される代替エネルギーが「ケトン体」です。
つくられたケトン体は血液に乗って全身に運ばれ、脳や筋肉などを動かすエネルギーとして使われます。そして、エネルギーとして使い切れずに余ったケトン体の一部は、尿として排出されるため、尿検査で「陽性」となるのです。
つまり、尿ケトン体が陽性になるということは、「体が体脂肪を原料にエネルギーをつくっている状態」である証拠です。前章の「糖質制限などのダイエット中」の方にとっては、体脂肪を順調に消費している喜ばしいサインともいえます。
合わせて読みたい!
ケトン体とは?期待できる機能や仕組み、糖質制限なしで摂取する方法まで簡単に解説
なぜ空腹・運動でケトン体が増えるのか
糖尿病や妊娠中でもなく、またダイエット中でもないのにケトン体が増えることがあります。それが「空腹時」です。
たとえば、健康診断を受ける際、正確な数値をはかるために前日の夜から絶食することがあります。場合によっては10時間以上にわたって食事をとれないことも珍しくありません。すると、体内の糖質が消費されて底をついてしまいます。体は生命活動を維持しようと、その直後から代替エネルギーをつくるため、体脂肪を分解して体内でケトン体をつくり出します。これにより体内のケトン体が増加し、尿検査で「尿ケトン体陽性」と判定されます。
また、運動後もケトン体の量が増加します。
大きな負荷をかけた筋トレや長時間のランニングなどの運動は、筋肉を動かすために大量のエネルギー(糖質)を消費します。運動量に対して食事からの糖質供給が少ないと、体内の糖質が消費されて枯渇します。その結果、体脂肪がエネルギー源として使われ、ケトン体が体内に増えるのです。
【判定別】尿ケトン体「±(プラスマイナス)」や「+(プラス)」の基準値
尿検査の結果には、「-(マイナス)」「±(プラスマイナス)」「1+~3+(プラス)」という記号で記載されます。数字が大きくなるほど、尿に含まれているケトン体の濃度が高いことを意味します。ここでは、それぞれの数値について解説します。
尿ケトン体の判定別 一覧表
| 結果 | 尿ケトン体検出度 | 状態・原因 |
|---|---|---|
| - | 陰性 | 正常 |
| ± | 擬陽性 | ごく微量のケトン体を検出 |
| 1+ 2+ 3+以上 | 陽性 | 絶食、激しい運動、ダイエット、慢性的な嘔吐・下痢などによりケトン体を検出 |
判定が「±(プラスマイナス)」だった場合
「±(プラスマイナス)」は「擬陽性(ぎようせい)」であることを示しています。完全に陰性ではないものの、ごくわずかな量のケトン体が検出された状態です。
判定が「+(プラス)」だった場合
判定結果が「+(プラス)」は「陽性」を示しています。なかでも「3+」以上は「強陽性」と呼ばれ、体内で体脂肪が著しく分解され、大量のケトン体がつくられている状態です。
尿ケトン体が陽性に加えて、「血糖値がとても高い」「吐き気や激しいだるさがある」といった体の異変を感じた場合は、自己判断はせず、早急に医療機関を受診しましょう。
ケトン体が気になるときの対策とセルフチェック

「健康診断後、尿のケトン体濃度が改善されているか気になる…」
そのような場合、ご自宅でおおよその状態をチェックできる方法があることをご存じですか?ここではその方法や、再び病院を受診するタイミングなどについて解説します。
呼気や尿のにおいの変化に注意する
ケトン体が体内で増えているかどうかは、「におい」からある程度推測できます。
ケトン体とは「アセト酢酸」「β-ヒドロキシ酪酸」「アセトン」の総称で、このうちエネルギーとして使われるのはアセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸です。アセトンはエネルギーとして使われないため、呼気や尿となって体外に排出されます。
このとき、アセトン独特の甘酸っぱいにおい、熟れすぎたフルーツのようなにおいを放ち、これを「ケトン臭」や「アセトン臭」といいます。ケトン体が増えると、特に呼気からケトン臭が強く感じられるようになるので、その変化に日ごろから注意しておきましょう。
合わせて読みたい!
ケトン臭は気になる?ケトン体独特の匂いと対策を解説
市販の試験紙・検査キットで経過をみる
市販の「ケトン体試験紙/ケトスティックス」を使ってチェックするのも1つの方法です。
インターネット通販で入手可能で、尿をかけるだけで簡単にケトン体濃度を試験紙の色の変化で判定できます。
健康診断を受けた翌日や数日後、しっかり食事(糖質)をとった状態で、日中に検査をしてみてください。もし「陰性」に戻っていれば、健康診断の結果は一時的なものであったとわかり、安心につながります。
ただし、検査する状態によっては正しい結果が出ないことがあります。
ケトン体の量がそれほど多くなくても、体が脱水気味であると尿中のケトン体濃度が相対的に高くなり、陽性が出やすくなります。尿の色がいつもより濃い場合は、こまめな水分補給を心がけ、脱水状態を改善してからチェックしましょう。
ほかにも、息を吹きかけるだけでケトン体濃度をはかれる「ケトンブレスチェッカー」を使用するのもいいでしょう。
- 五藤 良将さん
- 医師
市販の試験紙は手軽で便利ですが、結果の読み取りには少しコツがあります。多くの試験紙はケトン体のうち主に「アセト酢酸」を検出する仕組みで、脱水気味だと尿が濃縮され、実際より強い陽性に出ることがあります。検査は水分と糖質をしっかりとった日中におこない、尿の色が濃い日は避けると精度が安定します。あくまで日々の経過を大まかに把握する目安として活用し、陽性が続く場合や体調不良を伴う場合は、試験紙の結果だけで安心せず、医療機関で正式な検査を受けるようにしましょう。
再検査を受けるタイミングと受診すべき診療科
毎日の体調チェックや試験紙での結果、「長時間の絶食」「運動」「ダイエット」に心あたりがないにもかかわらず尿ケトン体陽性が続いている場合、あるいは「異常な喉の渇き」「頻尿」「急激な体重減少」「吐き気」「強い倦怠感」といった自覚症状がある場合は、自己判断はせず、早急に医療機関にて再検査を受けることが大切です。
診療科に迷ったら、まずは「内科」を受診しましょう。可能であれば、糖尿病の専門医がいる「糖尿病内科」や「内分泌内科」を選ぶと、よりスムーズに検査・診断を受けられます。受診の際は、健康診断の結果用紙を必ず持参しましょう。
まとめ
健康診断ではじめて「尿ケトン体陽性」という結果を目の当たりにすると、不安になってしまうのも無理はありません。しかし、これまで解説したように、尿ケトン体が陽性になるのは必ずしも危険であるケースとは限りません。
尿ケトン体陽性のほとんどは「体内の糖質が不足した際、生命を維持するために体が代替エネルギーをつくり出している」という正常な生理反応です。糖尿病などの持病がなく健康な方で、糖質制限などのダイエットをおこなっている場合であれば、「体脂肪がしっかり消費されているサイン」です。必要以上におそれることはありません。
健康診断の結果をきっかけに、体がどのような仕組みでエネルギーをやりくりし、生命を維持しているのか興味を持った方もいらっしゃるかと思います。そこで感じた疑問に対して、この記事や下記リンク『ケトン体とは』が解決のヒントになれば幸いです。
- 五藤 良将さん
- 医師
健康診断で尿ケトン体陽性と出ても、多くは体が脂肪をエネルギーに変えている正常な反応で、過度に心配する必要はありません。大切なのは「陽性かどうか」よりも「その背景に何があるか」です。空腹・運動・ダイエットなど思い当たる理由があり、体調も良ければ、まずは落ち着いて構いません。一方で、思い当たる理由がないのに陽性が続く、あるいは急激な体重減少や強い倦怠感を伴う場合は、糖尿病などが隠れていることもあります。迷ったときは結果用紙を持って内科にご相談ください。
合わせて読みたい!
ケトン体とは?期待できる機能や仕組み、糖質制限なしで摂取する方法まで簡単に解説
よくあるご質問
- 五藤 良将さん
- 医師
原因によりますが、一般的な飢餓状態であれば「水分補給」と「適切な糖質の摂取」で改善します。糖尿病による場合は、インスリン治療など専門的な医療処置が必要です。
- 五藤 良将さん
- 医師
健康な人が通常の食事を摂っている場合、血中ケトン体値が低いことは正常な状態であり、特に問題ありません。
- 五藤 良将さん
- 医師
尿中のケトン体は、通常は「陰性(-)」ですが、体内の糖分が不足し脂肪が燃焼されると陽性(+)になります。数値は「1+(陽性)」「2+(中等度)」「3+」「4+(強陽性)」と表記されます。数値が高くなるほど、体内の脂肪分解が急激に進んでいるか、脱水や飢餓状態である可能性が高まります。
- 五藤 良将さん
- 医師
一般的には入院治療(点滴)の検討基準となります。特に嘔吐がひどく水分も摂れない場合は、早めに医師に相談してください。
この記事の監修者
- 五藤 良将さん
- 医療法人社団五良会 理事長 / 竹内内科小児科医院 院長
防衛医科大学校卒業。大学校病院、自衛隊中央病院、自衛隊横須賀病院などで自衛隊医官として勤務。その後、津田沼中央総合病院などを経て現職。中性脂肪や生活習慣病に関する研究・発信を行っている。
この記事の編集者
ケトン体ラボ編集部
ケトン体の研究をしている大阪ガスが、ケトン体の基礎知識から関連分野まで、皆さまの健康的な生活を支える信頼性の高い情報をわかりやすくお届けします。
本記事の情報は記事公開時のものであり、 最新の情報とは異なる可能性がございます。 本記事に含まれる情報のご利用は、お客さまご自身の責任において行ってください。 詳しくは 「サイトポリシー」 をご確認ください。
尿ケトン体が陽性でも、その多くは空腹やダイエットに伴う体の正常な反応です。ただし、糖尿病をお持ちの方の強陽性はまったく意味が異なり、放置すると糖尿病性ケトアシドーシスへ進行することがあります。診察の現場でも、「のどの渇き」「尿の量が増える」「急な体重減少」「強い倦怠感」が数日のうちに現れていないかを特に重視します。これらの症状を伴う強陽性は、体が発する明確な警告サインです。心当たりがあるときは自己判断で様子を見ず、できるだけ早く内科や糖尿病内科を受診してください。